第一冠回顧
超3歳牝馬によるリターンマッチ。
勝負を制した陣営は凱旋門賞参戦を明言。準備すべきことは決まった。勝つイメージで行きたい。
ただ不安も。あの脚のせいで今後の道程で、またレース中でのアクシデントへの懸念は燻り続けるだろう。でも、新潟の結果が桜と直結したわけだし、今は騒ぎ立てず静観したい。
時計の壁に立ち向かいステイゴールドの進化を体現するレッドリヴェール。
叩いてこそのイメージを、全身バネのスマートボディで破壊。
函館の反動がいつ…。普通じゃないから、違う不安も生まれる。
ヌーヴォレコルトは次も期待できそうだが、それ以下には…。
桜花賞組から勝負圏内の穴馬を見つけるのは難しい。無論、馬券とは別なわけだが。
平穏にして、納得のゴールシーンとなった皐月賞。共同通信杯と弥生賞の勝ち馬が好走したから、穴党に出番はなし。桜を自重して、荒れ馬場への期待も前週から裏切られ…。淀は絶対嵐になれ!
オークス同様ダービー路線も勝負になりそうな馬と、精々着拾いに止まりそうな馬が判然としてきた。
トーセンスターダムが高馬の障壁にぶちあたり、アジアエクスプレスが当面、芝参戦を見合わせそうな情勢。
1、2着馬は皐月賞の条件に対してベストパフォーマンスを見せたが、同時に総合力も示しているから外的要因以外でのダービー凡走は考えにくい。きかん坊のヴィクトリー以外は、大概掲示板に。プレイアンドリアルも怖くなった。
オークスが見える桜花賞と、ダービーはまた別となりそうだった皐月賞。
事前に分かっていたこと。故に、オッズも結果も妥当だった。
この一冠目に、異常性を見出すこと自体無駄だったか。次だ。
最後の一花 ダンツフレーム(前)
00年6月。函館ダート1000Mから始まった物語。
ブライアンズタイム産駒で、芝・ダート・距離不問の馬。
ただ、少し昔気質の空気も醸し出していた男。
この頃から芝の高速化が進行していく。
折り返しの同条件の新馬を勝ち上がり、秋の阪神のオープン特別を2連勝。
いち早く翌春に照準を合わせ、きさらぎ賞から再始動。アグネスゴールドの2着。
初戦ではマイネルジャパン、2戦目で競り勝ったのがタシロスプリング。
ライバルは当初から骨があった。
叩き2戦目のアーリントンCを辛勝後、皐月・ダービーに挑戦するもともに2着。
以降、4-5-5-休-4-2。
相手は強かった。
アグネスタキオン、ジャングルポケット、マンハッタンカフェ、アドマイヤコジーン…。彼らは種牡馬としても成功。
ちょうどこの頃からだったか、サンデーに歯が立たなくなってきたのは。
苦戦中の5歳エアシャカールだけとなった宝塚記念。
後に大活躍するツルマルボーイやローエングリンもここでは脇役。1番人気。
ただ、ジャングルポケット直前回避の影響か、通常土曜でもその週に行われるGⅠの馬柱が競馬面のトップを飾るものだが、この時は当日の福島メインがGⅠを裏一面へ追いやった。
レースはローエングリンが気分よく飛ばし、三分三厘から仕掛けてツルマルの追撃をしのぎ切る王道の競馬で快勝。
藤田伸二、武豊、河内洋。
まだ20代そこそこだった福永も池添もこの馬に跨り、GⅠ馬を知った。
名手にも支えられた競走生活。
デビューから2年後の絶頂。が、この後は右肩下がりの軌道を描いてゆく。
終わりの始まり。
常々思う。勝負の世界は厳しいと。
皐月賞 -回顧ー
至極の名勝負の予感も、坂上で完全に決着がついた。
フジキセキ、蛯名正義、栗田博憲。共同通信杯だけなら人気に応えて不思議じゃない三者の共通課題は、快勝という思わぬ結果で大団円。
初、初、初。
フジキセキ産駒がカメハメハ産駒を完膚無きにまで打ち負かした。今回は格の差もあった程。
配合はスピード型も、快速型以外の今の馬は本質が似たり寄ったり。個性を見極めたい。
皐月賞制覇で三冠ジョッキーに大手をかけた鞍上は、次回の前掛かりの大勝負で人生最大のプレシャーと戦う。凱旋門賞とは違う。やはりダービーはステータスだ。
クラシックは初めての栗田師。
雨の高松宮記念を制したシンコウフォレスト以来のGⅠ勝利。ヤマニンゼファーを筆頭に、晩成型の活躍馬が多かった厩舎の傾向は、巡り合わせもあってのこと。
タレンティドガールで女王杯は勝っているが、牡馬クラシックは格別だ。
ただ、今回の主役は馬。
蛯名騎手が、新馬戦以来一番折り合ったというコメントを残したように、前走の共同通信杯みたいに内で抑え込むのに少し苦労した姿とはまるで別の馬。
結果、これが大きく影響する。
トゥザワールドやトーセンスターダムが勝負をかけた好位付けを敢行し、それを見るように平均より少し緩いウインフルブルームの作り出す流れに乗り、直線では17頭を制圧。
今までと違う競馬では、違う側面が出てきやすい。皐月賞の設定は合っていたようだ。
それと最後併せたトゥザワールドは、思われているほど器用ではない。
中山でこれ以上は…。終いの使い方は、母と同様結構な難題だ。
トーセンも少し残念。ローテーションに狙いがはっきり表れていたから、皐月賞対策は何もなかったはず。
池江師にしてはチグハグ。勝負の世界は厳しい。
アジアエクスプレスに今器用さを求めては酷だろう。彼なりの走りはできていたと思うし、体もできていた。
ダービーは…。この世代は、優等生タイプは少ないが、だからってとんでもない武器があるわけでもない。
ワンアンドオンリーが気にならない人はいないだろうから、逆に次も前か?
皐月賞 ―展望―
日本は未だ2400至上主義。凱旋門賞への畏敬の念には、異様さすら感じる。
クラシック競走は距離に対する耐性に加え、基本距離における底力の有無を明確化させて繁殖馬選定の基準にしようとする理念を具現化した形。
だが、今年はともかく、高速馬場でスピード型の馬が覇を競う近年の傾向から、距離そのものの持つハードルの高さは均衡し、三冠競走で最も短い距離の勝ち馬がNo.1という流れが定着しつつある。
ヴィクトワールピサやゴールドシップ、メイショウサムソンがそう。
牝馬の場合、二、三冠馬がどんどん登場するような時代になったから、桜花賞は可憐なイメージ以上に絶対不可欠な要素となり、格は年々上がっている。
そんな重要な一戦に、今年捉えどころのないメンバーが揃った。
3戦続けて快時計で駆けた馬。中山で一発を目論む才能もちらほら。
変則開催にもめげず結果を出し続けた馬や、京都でしか走ったことのない無敗馬らも参戦。
ただ2月時点で、2歳王者の動向を除けば、あとはトゥザワールドがトライアルでどうなるかだけが気になるのみで、ここの勝ち馬はもう眼前にいるという見立てがあったのも確か。
評価微妙だった暮れの2大ステージの勝ち馬も、それぞれ最重要トライアルで2着だったから、ひとまず方向性は定まっていった。あとは、どの馬の可能性を信じるか。
可能性という観点では、距離未経験の馬にも寛容なのが皐月賞。
イスラボニータ、ロサギガンティア、アジアエクスプレス。
いずれも美浦所属の重賞馬。本質を除けば適応範囲内の競馬だ。
もっと言えば、近10年でロゴタイプなど4頭の2000未経験馬が制していることを重視すると、この3頭は有力候補と見ることさえできる。
今週も蛯名騎手を追いかける。
イスラボニータ唯一の敗戦をどう評価するかは、案外難しい。
牡馬としては切ない結果だし、一方で速い上がりの競馬ばかりで着差が小さい割に連勝が続いているから、特殊で強烈な末脚に屈した時以外は、むしろ勝負強さを見せたとも言える。
血統の印象に見合ったここまでの戦績からは、まだ底力を出し切っていないとも推測できるし、勿論傾向のはっきり出ている父のジレンマが優勝を阻む最大の障壁となることを支持する根拠にもなる。
コーナーさえきっちり回ってくれば、自ずと結果を残せそうな雰囲気は、他馬の本番までの過程を見る限り、上位評価されて当然。
妙に内の枠を引いて万一の雨は怖い要素にもなりうるが、先行力は大きな武器。
今年の牡馬路線は、こういう出し入れが主体の競馬となるだろう。全ての長所を今回は支持する。
対抗はトーセンスターダム。あのズブさは次戦の展望に繋げる最高の武器となると考え、軸馬として推奨する。
旬な男を詠む
先日発表されたワールドベストホースランキング。ジャスタウェイのブッこ抜き独走にもミソをつけるような数字が公表された際は、論拠を持ってその審査体制を正そうと思っていたのだが、当該カテゴリー単独トップという評価に。
海外での結果。ディープが当時の基準で125ポンド。今回が130だからハーツの仔が…、なんて感情論を持ち出す暇はなかった。
一つ確かなことがあるとすれば、世界中に散りばめられたファラリスの子孫たちは、どの国においても主要血脈を形成し、国際的評価の高い競走で傑出した結果を残してきたという事。必然の流れだ。
世界一の馬券名人たる日本の競馬ファンは、何を今更と、嘲笑っている。
賛否両論の桜花賞の騎乗。今また違うプレシャーを感じつつ、2度目の皐月賞制覇を目論む川田将雅。
フクノドリームの逃げ脚は恐らく目視できなかっただろうが、最初から捕捉に手こずる相手とも思っていなかったはず。
本音を隠したインタビューではなく、勝つべくして勝ったと胸を張った受け答えは、敗戦のリスクを常にはらむ彼女の戦法を受け入れているように見え、信頼感も増した。
でも、それは策の一つを習得したに過ぎず、父が思わぬ戦法を強いられたかの地の苦闘から学ぶことはあまりに多い。
現状乗り替わりは得策とは思えないが、次戦は大切にだ。
矢作厩舎が快調に勝ち星を積み重ねている。
師は、強面の表情に違わぬ信念の男。転厩話が現実になったこともある。
明快な結果を出して得られる名声に左右されるような俗物ではない。
華麗なるキャリアから展開した未来進行形の変遷。不可能を可能にする化学変化の証明を期待したい。